推し、燃ゆ
著者:宇佐見りん
※こちらの記事はネタバレを含みます。
ネタバレが嫌な方は、ここから先は見ないようにお願い致します。
この本を読もうと思ったきっかけ
第164回芥川賞を受賞した作品です。
ミーハーではありますが、選ばれた作品というのはどんなものなのか、興味がありました。
また、筆者の宇佐見さんは21歳の大学生というのも、ビックリでした。
一回り以上違う世代の人がどんな文章を書き、どんな世界観があるのか、見てみたくなりました♪
共感できないのが素晴らしく価値がある
全体を通して、この作品にはほとんど共感できませんでした。
主に、主人公のあかりの視点とストーリーで構成されているのですが、おそらくあかりは発達障害の一種なのかな?
(作中に「ふたつほど診断名がついた」と書いてあったが、具体的には明かされていない)
ただ私は、共感できないことこそ価値があると思っています。
人は基本的に、自分の感覚や考え方・価値観しかわかりません。
あとは他からヒントを得て、想像するしかない。
「普通の生活」をするのがどれだけ難しいことなのか
「できないことが多い」というのは、どんな感覚なのか
作者の宇佐見さんが主人公と同じような経験をしたことがあるならともかく、もしこれが他からヒントを得て調査して想像で書いたのなら、ものすごい表現力だなと思いました。
推しにも色んな形がある
私も各界に推しがいます。笑
「推し」といっても、その関わり方は人それぞれ。色んな形がありますね。
私はこの本に書かれているあかりのように、誰か一人にここまで心酔したことはなかったなぁ…。
むしろ「特別な一人」にすることで、あんまり興味がなくなってしまう。その人が何をしようと、特別変なことでもしない限り、応援し続けることが決まっているから。
「推しを解釈し続けたい」というあかりの気持ち。これもまた私があまり共感できない部分で(推しだけでなく、恋人でもあまりそういう気持ちがない)、読んでいて新たな発見が多かったです。
生きづらさ
この作品は「生きづらさ」を随所に感じました。
あかりの家族とのストーリーや、学校やバイト先での出来事。
あかりは推しに関するブログを書いているのですが、こういうのはきっと得意なんだと思います。
一点集中型というか。
ただそれが、世間から見たら「ただの追っかけ」「楽しいことだけやっている」「怠けている」と思われてしまうのかもしれない。
これが、世界を救う何かの技術の開発とかだったら、そんな風には言われないのでしょう。
きっと「普通の人」なんてあんまりいなくて、みんなどこかに生きづらさを抱えているのかもしれないですね。
それは大人になるにつれ、誤魔化せるようになったり、うまく対処できるようになるだけで。(そしてそれが、ずっとできない人もいるのだろう)
人と自分を区切ること
この作品を読んで、改めて「みんな違う人間」というのを実感しました。
私には簡単にできることでも、それが凄く難しくて苦痛な人もいるかもしれない。
逆に他の人は簡単にできても、私には凄く難しいこともある。
私は妹がいるのですが、妹は昔から自律神経に障害があるようです。
普通に生活している分には、なんでも器用にこなすしセンスもあって思いやりもあって、ほんと尊敬するところばかりなのですが、どうも規則的な生活ができないみたいです。
ほんと、寝ると全然起きないんですよね!!目覚まし何個かけても寝続けるし、周りでガヤガヤしてても全く起きない。寝ている間に地震がきたら逃げ遅れてしまうんじゃないかと心配になるほど…。
そんな環境だったからか、私は昔から「人と自分を区切る」という感覚が自然と身についていました。
勉強できる人もできない人もいるし、足が速い人も遅い人もいる。
努力していないのか、努力してもできないのかは、事実を見ただけではわからないんだなって。
そしてだんだん、自分が「普通に出来ないこと」もわかってきました。
それに関して、以前このブログで書いた時の記事です↓↓
私は、誰かのことをわかってあげるなんて出来ないと思っています。
でも、自分にはわからない感覚を他から気づかせてもらうことで、想像はできるようになるかもしれない。
「わからない感覚」をたくさん集めることで、思慮深い人になれるかもしれない。
そういう点でも新しい発見が多く、読み応えがあって素晴らしい作品でした☆
表現力がすごい!と感服
この作品を読んでいて驚いたのが、表現力すごいなってことです。(私の語彙力よ笑)
いやどんな生き方してきたら、こんなに人の気持ちとか情景とか、繊細に表現できるのだろうか。
筆者の宇佐見さんは好きな作家さんもいらっしゃるようで、きっとこれまで色んな文学や言葉に触れて、それを大切にしてきたんじゃないかと思います。私の勝手な想像ですが…。
ちなみにラストも、私には何がなんだかわかりませんでした!笑
私がもっと色んな感覚を想像できるようになったら、このラストもしっくりくる時が来るのかなぁ〜♪