こんにちは、めぐる(@fpmeguru)です。
今回は
塾講師のアルバイトで経験した、仕事の「やりがい」
についてお話したいと思います。
Contents
一番「やりがい」のあった仕事
私は学生時代のアルバイトも含めると、約10種類ほど「仕事」を経験しています。
今回はその中で、一番やりがいがあったと思う塾講師のアルバイトについてお話します。
◎働き方についての記事はこちら◎
自分が通っていた塾とのギャップに驚く
私が塾講師のアルバイトをしたのは、大学に入ってからの1年間でした。
きっかけは、地元の友達が先にその塾で働いており、人が足りないからよかったら一緒に働かないかとお誘いを受けたため。
その塾は個人経営で、生徒2人に対して先生が1人つく個別指導の塾でした。
その塾を初めて訪れた時、自分が昔通っていた塾とのギャップに驚きました。
私は中学生の頃、「進学塾」といわれる類いのところに通っていました。
学力に応じたクラス分けがされていて、先生1人に対して生徒は10数人。学力を上げて偏差値の高い高校に入学することが目的の塾でした。
一方、私がアルバイトをした塾は、「塾に来ること」が目的の子(どちらかというと親の目的)も多かったです。
例えば、学校に行かず引きこもってしまったので、せめて塾には行ってほしいという事情。
学校が終わって遊び歩いてばかりなので、せめて週1は塾に通わせているという事情。
そこで私は、問題児と言われていた一人の男の子の担当をすることになりました。
引きこもりの全然喋らない男の子
ある日、その塾で問題児と言われていた中学3年生の男の子の授業をマンツーマンで担当することになりました。
この子の何が問題かというと、全然喋らない。
塾の授業も無断でサボりがちで、来てもずっと俯いていて、こちらが質問しても首を縦に振るか横に振るかのみ。
どうやら学校にも行かず、お部屋に引きこもっていることが多いようです。
以前何度か授業を受け持ったことがありますが、正直かなり扱いは難しかった…。
そしてこの日は、一緒に教える予定だった子が急遽お休みになり、その男の子と1対1で授業をすることになりました。
(絶対間がもたない…)
45分の雑談と5分の授業
その日も相変わらずその子は、ずっと俯いたままで一言も喋る様子がありませんでした。
「ここは何で間違えたかわかるかな?」
「……」
「…えっと、ここの接続詞が違うのだけど、これはどんな時に使うかわかるかな?」
「……」
「……」
あー、メンドクサイ。
その時の私は、そんな風に思ってしまいました。笑
先生として、生徒の学力を上げるのが仕事!と思っていました。
でも全然うまくいかないし、中3なのに中1の内容の授業だし、本人も勉強やる気ないんだろうし、親に無理矢理連れてこられてるんだろうな〜
とか色々考えて、私はこの時一生懸命勉強を教える、ということを諦めてしまいました。
(この頃私は大学生で、まだ仕事に対する責任感などを、よくわかっていなかったと思う)
「…あれ、その筆箱に入ってるキーホルダー何?」
パッと見、駅名のキーホルダーのようなものが、その男の子の筆箱に入っていました。
その子は少し焦ったように、それを隠します。
「あ、ごめん、見せたくないものなら全然いいんだけど。何か見覚えあってさ〜」
「……ボソッ…」
(…あれ、喋った!?)
どうやらその子は駅とか電車とかが好きらしく、そのキーホルダーは家族旅行に行った時に買ったものだそう。
「そうなんだ〜!いいじゃん!あ、先生大学で◯◯駅ってとこまで行ってるんだけど、知ってる?△△駅で乗り換えて行くんだけど。
でね、私すぐお腹下すから、◯◯駅までのどの駅がトイレ綺麗かなら知ってるよ!笑」
そんなくだらない会話を続け(私が一方的に喋ってただけ)、気づけば終了5分前を知らせるチャイムが鳴りました。
「あっやば!時間なっちゃった!今日ここまで進めなきゃいけなかったんだよね!!じゃ、これ、これはこう。わかった?…って、こんな早口でわかるわけないよね。笑
まぁちょっと自分でやってみて、わかんなかったら次来た時聞いて!ハイ、じゃあここまでやったね!終わり!!」
その時初めてその男の子が、少しだけ笑ったところを見ました。
そこからその子の授業は、ほとんど雑談の時間でした。
その子は駅や電車の写真や資料を持ってきたり、将来は電車を動かす何かの機械(?うろ覚え…)の仕事に就きたいという話までしてくれるようになりました。
先生は、その日の授業の進行表みたいなプリントを渡され、テキスト何ページから何ページまでやるとか、その理解度などを書いて塾長に提出するのですが、今だから言えますがまぁこれも適当に書いてました。
(勉強した時間が少なすぎて、正直に書けなかった。笑)
「あなたのおかげです。ありがとうございます」
受験も終わり、中学3年生は塾を卒業するシーズンになりました。
そして私も、4月に引っ越しをすることになり、その塾のアルバイトを辞めることにしました。
問題児だったその男の子は、高校受験はせず、専門学校へ行くということで塾も卒業になりました。
私が塾を辞める数日前、その子の母親が一人で塾に来ました。
「めぐる先生ですね。◯◯の母です。この度は息子がたいへんお世話になりました」
「あ!はい、こちらこそ、ありがとうございますー!」
「ほんと、先生にもたくさんご迷惑をおかけしたと思うんですが…。あの子中学に入ってすぐいじめにあって、学校に行かなくなってしまって。
せめて塾にはと私たちも努力したのですが、ダメな時はずっと部屋にこもってしまって、急に授業をキャンセルすることも多くて申し訳ございませんでした…」
「そうだったんですか…」
「でも、めぐる先生が担当になってから、あの子塾の時間になると自ら進んで用意するようになったんです…!!
それが私たちも本当に嬉しくて。あなたのおかげです。ありがとうございます」
それからの大学生活でもいくつかアルバイトをし、就職してからも色々な仕事をしましたが、こんな風に人に感謝されることってなかなかないんだな、というのを感じました。
今思うと、この塾講師という仕事は、そういう点で凄くやりがいのある仕事だったんだろうな。
…しかしその頃の私は、遊びたい盛りの大学生だったので
(やった〜引っ越して大学の近くになるから、友達ともたくさん遊べるぞ〜♪)
としか思ってなくて、塾講師の仕事を辞める時も全然しんみりした気持ちにはならなかったけど。笑
あの子は今、夢を叶えて電車の機械(?)の仕事に就いているのかなぁ。
社会人として生きてきてわかった「責任」
塾講師のアルバイトをしていた時の私は、大学生だったこともあり、仕事に対する責任感はまだ備わっていなかったように思います。
今同じ状況になったら、私は45分雑談して5分勉強するなんてことはできないと思う。
将来やりたい仕事を話してくれた時も、その仕事に就くためにはどこに進学したら良いかを調べてアドバイスしてあげるべきだし、学力を上げさせたいなら嘘でも「それなら数学できないとなれないよ」とか「こういう場面で国語はできた方が良いよ!」とか「これからの時代そういう仕事に英語は必須だよ!」とか言ってモチベーションを上げさせれば良かったのに…笑
まぁ今回の場合は、それでたまたまその子が打ち解けてくれて少しだけ活動的になったことに、ご両親もとても感謝してくれたのですが。

模範的な先生ではなかったと思いますが、誰かを少しだけ良い方向に導けたのだとしたら、それはとてもとても素敵なことだったと、今になって思います。